2012年4月10日火曜日

ウサギ - Wikipedia


ウサギ、兔)はウサギ目に属する草食哺乳類の総称。ここでは、ウサギ科を主に取り上げる。(ウサギ目ナキウサギ科についてはナキウサギを参照。)

全身が柔らかい体毛で覆われている小型獣である。最大種はヤブノウサギで体長50 - 76 cm。毛色は品種改良もあって色も長さも多彩である。多くの種の体毛の色彩は、背面は褐色、灰色、黒、白、茶色、赤茶色、ぶち模様などで、腹面は淡褐色や白。

他の獣と比しての特徴としては、耳介が大型なことが挙げられる。ウサギ目内では耳介があまり発達していない種でも、他の哺乳綱の分類群との比較においては耳介比率が大きいといえる。音や風のするほうへ耳の正面が向くよう、耳介を動かすことができる。また、毛細血管が透けて見えるこの大きな耳介を風にあてることで体温調節に役立てるともいう。

眼は頭部の上部側面にあり広い視野を確保することができ、夜間や薄明薄暮時の活動に適している。鼻には縦に割れ目があり、上部の皮膚を可動させることで鼻孔を開閉することができる。門歯は発達し、一生伸びつづける。かつてはこの門歯の特徴をもってネズミと同じ齧歯目の中に位置づけられていた。しかし、上顎の門歯の裏側に楔形の門歯があるものをウサギ目として独立した目分類がなされるようになった。歯列は、門歯が上顎4本、下顎2本、小臼歯が上顎6本、下顎4本、大臼歯が上下6本で、計28本の歯を持つ。

かつてネズミの仲間と分類されていたように、肉食であるネコやイヌとは異なる点が多く、ウサギの足の裏には肉球はなく、厚く柔らかい体毛が生えている(ただし肉球のある種もある)。前肢よりも後肢が長く、跳躍走行に適している。前肢の指は5本、後肢の趾は4本で、指趾には爪が発達する。体全体は丸みを帯び、尻尾は短い。

盲腸は長い。尿と糞は1つの穴(総排泄口)から排出する。

草原や半砂漠地帯、雪原、森林、湿原などに生息する。 アナウサギは地中に複雑な巣穴を掘って集団で生活する。縄張り意識は比較的強く、顎下の臭腺をこすりつける事で臭いをつけてテリトリーを主張する。 ノウサギは穴での生活はしない。

食性は植物食で、草や木の葉、樹皮、果実などを食べる。一部の野生種は昆虫なども食べるという。

胎生。ネコなどと同じく、交尾により排卵が誘発される交尾排卵動物。妊娠期間は最長がユキウサギの約50日で、多くの種は30 - 40日。一度の出産で1~6頭(ないしそれ以上)を出産する。

アナウサギは周年繁殖動物(繁殖期を持たない動物)に分類され、年中繁殖することが可能であり[1][2]、多産で繁殖力が高い動物である。 ノウサギは春先から秋まで、長期的なゆるい繁殖期を持っている。

天敵はキツネをはじめ小~中型の肉食獣、猛禽類。

種類にもよるが、時速60~80kmで走ることができるという。

声帯を持たないため滅多に鳴く事はないが、代わりに非言語コミュニケーションを用いる。代表的なものは発達した後脚を地面に強く打ち付けるスタンピングで、天敵が接近した時にスタンピングをする事で仲間に警戒を促すのが主であるが、いらいらや不安など不快な感情を持つ時にもこの行動をとる事がある。

デリケートな生き物でもあり、ペット飼育されているウサギにはストレスを感じた時に稀に自分の体毛を毟り取る行動が見られるが、ほかのペット動物でもありうる事である。

うさぎの唾液には、衛生状態を保つ成分が含まれている。顔を前脚で覆うように撫でたり耳を撫でる仕草をみかけるが、前脚に予め付着させておいた自らの唾液を目的の部位全体に行き渡らせる事で衛生状態を保っているのである。

[編集] 生理学的情報

寿命
5 - 11年(稀にそれ以上:ネザーランドドワーフで最高年齢13歳の記録がある。※ギネス記録は18歳10カ月)
体温
ウサギの平均体温は38 - 40℃ (100.4 - 104 F) とかなり高温までが正常範囲。39℃台の体温を正常と判断し対処する必要がある。体温が上がりすぎる場合は耳を水で軽く湿らせタオルで全身を巻いた上からアイスボトルなどで冷やし、逆に体温が37.7℃以下の場合は温かい布で全身を包みカイロなどでその上から温める。
心拍数
130 - 325/分
呼吸数
32 - 60/分
全血液量
57 - 65 ml/kg
血圧
90 - 130/60 - 90 mmHg
食物消費量
5 g/100 g/日(個体の大きさによる)
飲水消費量
5 - 10 ml/100 g/日(あるいはそれ以上)
胃腸管通過時間
4 - 5時間

南極大陸や一部の離島を除く世界中の陸地に分布している。ペットとして持ち込まれたものも多く、オーストラリア大陸やマダガスカル島には元々は生息していなかったとされる。

日本では、各地の縄文時代の貝塚からウサギの骨が出土することや、古事記の「因幡の白兎」などに登場することなどから、そのころには既にかなりの数が棲息していたものと考えられる。灰色や褐色等の毛色を有し、積雪地帯では冬には白毛に生え変わる在来種ニホンノウサギは、日本の固有種として知られている。また、絶滅危惧種であり国の特別天然記念物アマミノクロウサギは、世界でも奄美群島の一部のみに生息する。

ウサギ目ウサギ科のウサギ科を参照。

[編集] 人間とのつながり

野生のノウサギ(hare)やアナウサギ(rabbit)、家畜としてのカイウサギ(飼いウサギDomestic Rabbit)、ペットとしてのイエウサギ(家ウサギHouse Rabbit)は、いずれも人間との関わりが深い動物である。

[編集] 狩猟対象として

野ウサギは昔から食料や毛皮、遊興などの目的で狩猟の対象とされている。特に欧米では、ウサギのハンティングは文化的なスポーツとして扱われている。

狩猟の際にウサギを追いかけるときは必ず斜面の上から追いかけると有利、逆に斜面を登る形で追いかけると不利とされている。なぜならウサギの身体的特徴として後ろ足が長く前足が短いため、ウサギは上り坂では体の傾き具合が水平になるため上り坂で坂を上るのに強く、下り坂では前かがみのようになってしまうため下り坂を下るのは苦手としているからである。

上野公園にある西郷隆盛像(高村光雲作)は、お気に入りの薩摩犬の雌犬「ツン」(後藤貞行作)をつれて趣味の兎狩りをしているときの姿である。

[編集] 食肉として

狩猟や養殖によって得られたウサギの肉は、食用として利用されてきた。

ウサギは柔らかい食肉となる。ウサギのフィレ・ステーキという料理もあるが、1羽のフィレ部分はホタテ貝の貝柱程度の寸法しかなく数頭分のフィレ肉を使うことになる。挽肉にすると粘着性が高いので、ソーセージやプレスハムに結着剤として使われることがある。

日本でも、古来より狩猟対象であり、食用とされてきた。縄文時代の貝塚から骨が見つかることはそれを示唆するものであると考えられ、江戸時代徳川将軍家では、正月の三が日にウサギ汁を食べる風習があったという。秋田県の一部地域では日の丸肉の名称で呼ばれ、旅館料理として出されることがある。この日の丸肉という名称は、一説によると、明治期に日本で品種改良されて定着した白毛に赤目のウサギが、あたかも日の丸の色彩を具現化したような動物であったことによるともいわれる。

欧州各地でも古来より食用とされ、フランス料理では、ジビエとして伝統的にラパンリエーブルなどの名称で食肉として利用されてきた。現代では牛、豚、羊など大型獣の食肉が広く一般に普及するにつれ、伝統的な料理に使われる程度になってきている。

Wikipedia英語版によると、ウサギ肉は成長段階によって3種類に分類される。生後9週まで、体重4.5~5ポンドのものは'Fryer'。そこからさらに育てた'Roaster'は、体重5~8ポンド、月齢8ヵ月までのものを指し、Fryerより肉が硬い。肝臓や心臓なども食用にする。

ユダヤ教においては、ウサギはカーシェール(כָּשֵׁר, Kasher)ではない。つまり、食べてはならない動物に指定されている。(→ 食のタブー)。

[編集] 毛皮として

狩猟や養殖によって得られたウサギの毛皮は、服飾品としても利用されてきた。

防寒用として世界各地でその毛皮が用いられてきたほか、一種の装飾用としても用いられる。

また、毛皮としてではなく毛足の長いウサギの毛を羊毛のように刈り取って織物用の繊維として利用することも行われてきた。アジア原産のアンゴラ山羊やアンゴラ兎をつかったモヘヤが知られているが、欧州ではアンゴラ (繊維)という繊維利用専用の品種も作られた。日本でも、明治から太平洋戦争の時代にかけて軍需毛皮を生産する目的からウサギの飼育が盛んになり、日本アンゴラという種が作られた。

[編集] 実験動物として

薬品や化粧品の安全性のテストや抗体作成に利用されることがある。

[編集] ペットとして

現在ペットとして世界で広く飼われている各種のイエウサギのルーツは、欧州原産のアナウサギである。イエウサギとして品種改良されたウサギは比較的飼育が簡単で、鳴き声が小さく(声帯がないため基本的には鳴かない)、人に慣れるといった特性を有し、一般家庭での飼育ができる。 飼育方法と注意点は後述する。

[編集] 日本におけるウサギ飼育の歴史

日本における飼育の始まりは、欧州等を原産とするアナウサギを改良して近世以降に輸入・飼育されるようになったものであるとされる。移入された時期は天文年間(16世紀前半)で、オランダ人がペットとして日本へ連れて来たと伝えられているが、正確な移入時期と経緯はまだ確定されていない。

江戸時代中期には、ウサギを飼うことはある程度普及しており、人見必大著『本朝食鑑』では体毛が白色で赤い目をしたウサギが飼育され、人によく馴れることが書かれている。また、小野蘭山著『本草綱目啓蒙』や山本亡羊著『百品考』などには、ウサギが家で飼育されていることが書かれている[3]。喜多川歌麿の浮世絵『浮世七ツ目合』にはペットとして飼われているウサギが描かれている。当時、ペットのウサギは高価だったため裕福な商人などが飼っていた[4]

明治になると軍需のための食肉毛皮需要によりウサギ飼育が非常に盛んになり、1872年に在来と外国の混血から生まれた更紗模様のある種雄は200 - 600円で売られ、種付けは2 - 3円/回であった。子ウサギはコロと呼ばれ10円以上した(ウサギバブル。『風俗画報』310号 明治38年2月10日 在三河安城、久永章武による)。このため1873年に東京府(現・東京都)布達、兎取締ノ儀(1876年改正、兎取締規則)で頭数の届出、1羽1円の税金、無届1羽につき月2円の納入とされ、1879年に廃止されるまで続いた。太平洋戦争中、日本はアンゴラウサギの飼育頭数が世界一になったことがあるが、これは食糧の確保及び兵士の防寒着を作るために飼育が奨励されたためである。


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日本の白い体毛・赤い目という特徴を持つウサギは「日本白色種」という品種で、明治の頃にニュージーランドホワイト種から作られた。小学校などでの飼育もこの頃から昭和にかけて広まりをみせた。このウサギは近年では「ジャパニーズホワイト」とも呼ばれている。

[編集] 飼育ウサギの野生化

人間に飼われていたウサギが野生化して繁殖している例がいくつかある。

広島県大久野島
瀬戸内海にある広島県大久野島は別名を「うさぎ島」という。かつて島外の小学校で飼われていたウサギがこの島で放されて繁殖している[5]
愛知県前島
愛知県幡豆郡の無人島である前島も、名鉄海上観光船によって数百羽のうさぎが放し飼いにされ、「うさぎ島」と呼ばれた。日本猿を放し飼いにされた「猿ヶ島」こと沖島とともに41年間にわたって観光航路となっていたが、1997年11月30日に両島をめぐる観光船は運航廃止となり、ウサギは各地の動物園に、猿は日本モンキーパークに引き取られた[6]
オセアニアにおける外来種問題
ここではウサギの野生化が環境問題として扱われている。
オーストラリア大陸では、哺乳類は始新世までは有袋類と単孔類、そして有胎盤類が共存していたが、その後になって有胎盤類が一度姿を消した。5500万年前に翼手目が、2800万年前にジュゴンや鰭脚類が、約5万年前にネズミ目が現れ始めたが、ウサギ類はこの時まだオーストラリアには現れていなかったとされる[7]。同様に、ニュージーランド島には、翼手目、鰭脚類を除けば哺乳類はいなかったとされ、当然ウサギもいなかった[8]
オーストラリアでは1859年に、ビクトリア州において食用やハンティングの目的で飼育ウサギ持ち込み、それを放獣したのが、ウサギ類の分布の始まりであるとされる[7]。現在はタスマニア州を除く全州に分布している[7]。ウサギが増えたわけであるが、気候が適していて、餌が豊富で、その上で人間以外の天敵の猛威がさほどでもなかったのである。農作物や牧場の牧草、土着の植物を食い荒らし土壌の流失の原因になったとして、ウサギが数々の固有種とニッチを競合すること等とともに問題視された[7]。そのため、オーストラリアでは農作物を守るため、ウサギの侵入を防ぐ「ラビット・プルーフ・フェンス」が敷設されている。ウサギを駆逐するため盛んに捕獲したところ、ウサギ毛皮の売上高がもともとの特産である羊毛の売上高を上回るという皮肉な結果を招いた時期があった。最近では、ウサギを捕食対象とする野良ネコが繁殖する事態も生じている。いうまでもなく、このノラネコもウサギ同様、人間が持ち込んだものが野生化したものである。

[編集] 品種

ここでは主に、アナウサギをペット用に品種改良したイエウサギについて、その品種を取り上げる。

ネザーランド ドワーフ
短毛で小型のウサギ。好奇心が強く活発で、人にあまり馴れない個体と友好的な個体がある。ドワーフ(Dwarf)とは、「小さな妖精」の意味がある。一般的には「ピーターラビットのモデル」として人気が高い(絵柄の外見上のモデルという意味であり、穴で生活したりする生態のモデルは野生のアナウサギをもとにしている)。また、ペットショップ等で「ネザーランド」「ピーターラビット」等の品種として売られているウサギは、ほとんどがこのネザーランドドワーフの雑種である。
ロップイヤー(主な品種:ホーランド ロップ、アメリカンファジー ロップ、イングリッシュ ロップ、フレンチ ロップ)
耳が非常に大きく垂れているのが特徴で、「イングリッシュ」のように、本来は中型のウサギであるが、人為的に品種改良された「ホーランド」や長毛種の「アメリカンファジー」のように小型になっているものが多い。他の品種と比べて顔が丸く愛嬌があり、性格は非常におとなしく、人にもよく懐くので、ペットとして人気が高い。
ドワーフホト
目の周りに特徴のある綺麗なアイラインを持つ小型のウサギ。ネザーランドドワーフが元になっている。性格もネザーランドドワーフに近いが、原産地は西欧でアジアでは珍しい種類。
レッキス(ミニレッキス)
短毛種だが毛の密度が濃く、毛皮の質が非常によいために毛皮にも使われる中型のウサギ。性格は穏やかで人懐っこいので、人とも一緒に遊ぶ。小型に品種改良されたものは「ミニレッキス」と呼ばれている。
アンゴラ(主な品種:イングリッシュアンゴラ、フレンチアンゴラ、サテンアンゴラ、ジャイアントアンゴラ)
本来は被毛を利用するために生み出された長毛種。非常におとなしい性格で我慢強く、人形のように動かない個体が多い。
日本アンゴラ種は日本で独自に改良された品種である。(独)家畜改良センター茨城牧場・長野支場において家畜遺伝資源の維持を目的として飼育(生体維持)されていたが、平成18年度から凍結受精卵新規導入による血統維持となり、現在、生体の飼育はされていない[9]。しかし、その血統は、神戸市立六甲山牧場に受け継がれており、生体を見ることが可能である。また、販売も行われている[10]
ジャージーウーリー
小型の長毛種。おとなしい性格なので、ペットとしては非常に飼いやすい。ウサギの中でも1980年代に作られた比較的新しい品種で、ブリーダーの出身地がアメリカ・ニュージャージー州出身の為この名称となった。
ジャパニーズホワイト
日本白色種とも呼ばれ、日本で古くから飼われていた中型の品種。日本では実験用として最も多く利用される。アルビノと呼ばれる色素欠乏症の目の赤い個体が多い。日本人の紅白信仰も手伝いウサギのイメージとして白い体に赤い目が一般的と思われていることが多い。個体によっては高価。日本白色種(大型、中型、小型)は(独)家畜改良センター茨城牧場・長野支場において家畜遺伝資源の維持を目的として飼育されている[9]
フレミッシュジャイアント
他のペット用品種がアナウサギ系統の改良によるものが多いのに対し、ノウサギ(ヘアhare)を原種としてを品種改良された。ウサギの中では非常に大きなサイズの品種で、人形のようにおとなしい。大きな体に加え、最大7 - 8 kg近くまで体重が増える。同様の大型種としては、本来食肉用に作られた「ニュージーランド」、大型でも活発な性格の「チェッカードジャイアント」、ノウサギの性格を残した頭のよい「ベルジャンヘア」等がある。
ヒマラヤン
目は赤く、前足後足の先、耳、鼻、尻尾が黒色、他の所は全身白色。体重、約1.5 - 2 kgでヒマラヤ地方(アジア)原産でイギリスでペット用に改良。
ダッチ
鼻のまわりからおでこと首から前足が白い毛で、目のまわりと耳と背中から腰と後ろ足などの部分は黒い毛でパンダ柄になっており、別名パンダウサギとも呼ばれる。オランダ原産。
ライオンラビット
顔のまわりに、ライオンのたてがみのような長い毛があるのが特徴で、小型のドワーフ種から改良された。ドイツ原産。

他にも様々な改良品種がある。国内で一般的にミニウサギとして流通しているものは、ブリーダー、ペットショップが売買の便宜上に付けた名前であって、ミニウサギという品種があるわけではない。

[編集] 飼いウサギ(ペット)の飼育

ペットウサギは体温調節が難しいため、屋内で飼うことが必須。直射日光の当たる屋外飼いは気温、体温が上がりすぎて死を招く。かつて農家などで飼われていた名残りで、俗にウサギ小屋と呼ばれるような小さなケージで飼うことも可能ではある。しかし、運動不足や食欲低下、ストレスを招き、早死にさせないためにも、サークルで囲った専用の飛び回れる十分なスペースを設けることが望ましい。サークル飼いができずやむをえずケージ飼いをする際の注意点については後述。

犬猫と違い、抱きかかえる行為はウサギには好ましくない。何故ならそれは、草食動物であるウサギがもっとも恐れる「捕獲」を意味し、不必要な恐怖心を与えてしまうからである。そのため必要でない限り無闇に抱き上げることは慎むべきである。稀に抱っこされても大丈夫なウサギもいる。特に小さな子供が抱きかかえるとウサギが暴れ出し手を離してしまい危険である。ウサギにとって予期せぬ落下は事故のもとになり、数十cmの高さからでも骨折する場合がある。ウサギの骨はもろく骨折は回復困難になるので無駄に抱きかかえてはならない。正しいウサギの抱き方は耳を持つのではなく、犬猫同様に片手で身体全体を抱え、もう一方の手でお尻を支える。耳を持つ持ち方は、昔狩猟や食肉用に殺したウサギを引っ掛けて持った� �合に持ち運びしやすい持ち方で、生きているウサギには絶対にしてはならない行為である。

[編集] 食餌

ペット / 飼いウサギは新鮮な水、干し草(チモシー、オーツ等)と生野菜を主食とし、固形ペレットは補助食用として与えるのが望ましい。干し草は消化器官や胃腸の働きを助け毛玉症や胃腸内鬱滞などにかかりにくくする他、不正咬合の予防にもなるためウサギにとって不可欠である。干し草は24時間食べ放題にし不定期に食せる状態にする。生野菜はよく洗い水気を切ったものを与える。野菜の種類によっては毒性のあるものや高糖分のものもある。毎日濃緑色あるいは濃黄色の野菜の中で異なる3 - 5種類を選ぶ。

ウサギの食糞行為は、正常な行為であり、新鮮であれば問題ない。

[編集] 与えてよい野菜

アルファルファの芽、バジル、ビーツの若葉、ブロッコリー、芽キャベツ、ニンジンの葉、コエンドロの葉、コラードの若葉、エンダイブ、パセリ、ドクダミ、パクチ、コスチャ、ケール、キャベツの外側の葉、キイチゴの葉、カモジグサ類、シバムギ、エンドウのさや(エンドウではない)、びわの葉、カボチャの葉、タンポポの葉、カブの葉、アスパラガス、小松菜、クローバー、ミントの葉、マスタードグリーン、オクラの葉、ペパーミントの葉、ピーマン、パプリカ(赤、黄、緑)、ラズベリーの葉、スクワッシュ、ズッキーニ、バターナッツ、カボチャ、ロメインレタスなど。

絵本やアニメに登場するウサギはニンジンが好物として描かれることが多く、事実ニンジンの根はよく食べるが、高糖分なので時々与える程度にする。キャベツはガスを溜めるのであまり与え過ぎないほうがよい。


犬の癌は数日のうちに広がることができ

[編集] 与えてよい果物

リンゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、パイナップル、メロン、パパイヤ、ピーチ、プラム、ナシ、ラズベリー、イチゴ、バナナなど。果物は基本的に高糖分なので普段は与えず病気のときなどに与えるとよい。

[編集] 毒性のある野菜

アボカド、タマネギ、ニンニク、ショウガ、ホウレンソウ、チョコは中毒症状を引き起こす。

[編集] ケージ飼い / サークル飼い

ケージ飼いでは運動不足や食欲低下、ストレスを招くため、サークルで囲った専用の飛び回れる十分なスペースを設けることが望ましい。ケージ飼いをするしかやむを得ない場合は、最低背伸びできる十分な高さがあり、横は十分に伸びて寝そべることができる、最小でも体長3倍程度の広さのあるものを選ぶことが必要。ケージ飼いの際は、毎日必ずケージから出して広い場所で最低1 - 2時間以上は飛び回り運動できる時間を与えるなどの配慮が望ましい。

サークルは、犬用など高さ70 cm以上あるものが望ましい。ウサギのジャンプ力は驚くべきもので1 mは軽くジャンプする個体も多いため、個体に合わせ安全性が確保できる高さのあるものを選ぶことが望ましい。サークルは8 - 10パネル続きのもの、もしくは2つのサークルをつなぎあわせるなどしてできる限り広い範囲で囲い走り回れるスペースを確保したい。床の汚れ、傷防止のためにラグ等を敷くと良い。サークル内には清潔な水、トイレ(猫用のリッターボックスに干し草を入れたもの)、24時間十分に食せる干し草、かじったり、掘ったりできる無着色の安全なおもちゃをいくつか入れることも忘れてはならない。大きなスペースを囲えない場合は、ケージ飼い同様に1日最低1 - 2時間以上室内に解放し、広い場所で運動できる時間を設ける配慮が望ましい。

[編集] 健康管理

専用フード(ペレット)や生野菜等の食餌以外に消化作用に大量の繊維質を必要とするため、牧草(ペット店で市販の干し草:チモシー、オーツ)は24時間食べ放題の状態にする必要がある。牧草を食すことで胃腸が常に動いている状態になるため、胃腸内鬱滞や毛玉症などの病気予防になり、お腹からガスを逃がす働きがある。また歯が常に伸びるウサギに多い不正交合の予防にもつながることから牧草と生野菜をウサギの主食として扱い、ペレットは補助食として扱う。その他に新鮮な水が必要。

健康管理は毎日の掃除、運動、飼い主との交流時間以外に定期的な爪切りや毎日の健康チェックを行う。最低年間2回は、ウサギの専門獣医師による定期検診を行うこと(犬猫病院ではウサギを診られない医師が多いためウサギの専門獣医師を探す必要がある)。5歳以上で高齢になるため、5歳以上になったら定期検診時に年1回はレントゲンと血液検査をし健康状態を把握することが望ましい。

イヌやネコを飼うときの注意と同様、人間とは違って一度に複数個体が生まれるのが通常であることを考え、繁殖計画がないのであれば、雄雌を共に生活させないなどの注意をすること。去勢手術を行う場合は満1歳以上が好ましい。去勢によって無計画妊娠を防ぐ以外にウサギの健康状態を保つのに有効という考え方もある。イヌやネコの場合と同様に、去勢した個体は高齢になったときの子宮癌や睾丸の癌予防の効果が期待でき、スプレイ等の行為も軽減されることが多い。

[編集] 単独飼い / 多数飼い

多数飼いの場合、グルーミングをお互いがし合うため、病気予防につながり長生きしやすくなるともいわれる。元々単独飼いしていたウサギに同居するウサギを増やしたい場合は、時間をかけてお互いを慣らす必要があり、いきなり一緒にするのは危険なので絶対にしてはいけない。お互いをケージ越しに置き2週間程度様子を窺う。このとき、ケージは、お互いのウサギの歯や爪が相手に届かないように、必ず8~10cm離して置き、ウサギが暴れてもその隙間が狭くならないようにする。万が一ケージ越しに噛み付くと、その後の関係改善が困難になる。慣れた頃に、お互いの臭いがない場所に2分間程度一緒にする。喧嘩をするようであればすぐに引き離す。これを毎日少しずつ行い、徐々に時間を増やし、数週間繰り返していけば大抵の� �合仲良くできる。また、一度仲良くなったウサギを引き離すのは好ましくないとされる。顔合わせを開始した時点から2週間以上経っても喧嘩を繰り返すようであれば、相性が悪い場合が殆どなので、検討する必要がある。無理に続ければお互いのストレスになりストローク等を引き起こす可能性がある。相性が悪い場合は、双方が接触しない場所を設け、単独飼いにする。

[編集] ウサギ飼育に関する誤解

ウサギは水を飲むと死ぬ?
ウサギも生物である以上は水は必要であり、誤解である。
この誤解の根拠は、湿度の高い環境ではコクシジウムに感染しやすくなること、そしてウサギにとってコクシジウムは死に直結するケースが多いことが挙げられる。しかし、実際には水分の多い野菜や果物で水分が摂れるという面もあるので、野菜などを常時与えている環境では大量の水分は必要ではないが、飼いウサギの場合は毎日新鮮な水を用意することは必須。
出産直後だけは別で、十分に水分を与えないと自分が生んだ子を食い殺すことがある。
水皿に糞・餌・敷きわら等が入って汚染されることのないよう心がける必要があるのは他の動物と同様である。
ウサギは鳴かない?
声帯を持たないために他の動物と同じように鳴くことはないが、安心できる状況ならば食道などを震わせることで、興奮時に「ブッ、ブッ」という小さな声を上げる。交尾時にも、オスは鳴き声をあげることがある。また、敵に襲われたり生命の危険を感じると叫び声をあげることがある。
ウサギは寂しいと死ぬ?
ウサギは縄張り意識が強い動物であるため、単独で飼うこともできるが、きちんと去勢手術を施してあるウサギ同士であるならば多数飼いをした方が長生きすることができる。寂しいと死ぬというのは飼い主が相手をしてやらなかったり、掃除などの管理をしていない場合で、どのような動物でもその場合死に至る。特にウサギは胃腸内鬱滞になることが多く、発見が遅れて、放置されたうさぎが12時間以内で死に至るケースもあることからこのように言われているのではないかとも考えられる。
ウサギの目は赤い
ジャパニーズホワイト(アルビノの個体を固定した白毛で赤い目のカイウサギ)は赤い目をしているが、種類によって目の色は様々である。
  • 子どもたちの仲間として

ウサギは草食であり肉食獣のようには人を襲わないし、子どもたちと仲良く遊んでくれる動物として、その愛らしい姿はさまざまな形でマスコットとなって人間世界で愛でられてきた。

西洋東洋を問わず、子ども向け用品を扱う企業が、ウサギをマスコットやシンボルマークに使うことは多い[11][12]

ウサギはイヌやネコと同様に人間に身近な動物であり観察しやすいこと、可愛いイメージが強いこと、擬人化しやすいことなどから、漫画やマスコット等のキャラクターとしても多く登場する[13]

ウサギを主題とする音楽、文学などについてはウサギを主題とする作品一覧を参照。

[編集] 日本におけるモチーフとしてのウサギ

[編集] 神聖なモチーフ

日本には古来より、ウサギが月に棲むという説話が仏教道教説話あるいは民間説話として伝わっている。

たとえば仏教的説話を多く題材にとる『今昔物語集』第五巻第十三話「三の獣、菩薩の道を行じ、兎身を焼く語」には、次のような捨身慈悲、滅私献身の象徴としてウサギが描かれる。

昔むかし、天竺(現在のインドとみなされる)にウサギ・キツネ・サルの三匹の獣があり、ともに熱心に仏教の修行に励んでいた。そこに、今にも倒れそうな見るからにみすぼらしい老人が現れ、養ってくれる家族もなく貧しく食べるものもないと三匹に訴えた。そこで、サルは木に登って木の実をとってきたり、里に出て里人の果物や野菜をかすめてきて老人に与え、キツネは川原へ行って魚をとってきたり、墓に供えてあった餅や飯をかすめてきて老人に与えた。サルは枯れ枝を拾い集め、キツネがそれに火をつけて、食事の支度を始める。その一方で、ウサギは野を駆けずりまわり東西南北あちこちを探し求めたが、老人に与えるものは見つけられず、手ぶらで帰ってくるしかなかった。そんなウサギを見て、サルやキツネそ� �て老人までもが、ウサギを嘲笑し、罵った。しかしウサギは言う。「確かに己には食べ物を奪って持ってくる力はなかった。ですから、この身を焼いてお食べください」と。そう言うがはやいか、ウサギは火の中にとびこんだ。この様子を見ていた老人は、たちまちにして本来の帝釈天の姿に戻り、すべての生き物たちにこのウサギの善行の姿を見せるために、月の中にウサギを移した。今でも月には煙のような雲影とウサギの姿があるのはそのためである。すべての人が、月を見るたびにこのウサギの行動を思い起こすように。

以上が、「今は昔、天竺に兎・狐・猿、三(みつ)の獣ありて、共に誠の心を発(おこ)して菩薩の道(どう)を行ひけり」に始まり、「万(よろづ)の人、月を見むごとに此の兎の事思ひいづべし」で終わる説話のあらすじである。

平安時代末期ごろに原型が成立したとされ江戸時代には広く読まれていた『今昔物語集』に採録されたこの仏教説話は、釈尊の前世エピソードを集めた古いインドの物語ジャータカや中国の『大唐西域記』などの影響をうけているとみられる。この仏教説話がいつごろ日本に伝わり各地に広まったかは定かではないが、奈良時代以前に作られた法隆寺玉虫厨子の台座絵背後の須弥山図において、帝釈天宮の右上に月(中におそらくウサギか蟾蜍(ひきがえる))と、左上に真っ赤な太陽(中に三本脚の烏)がすでに描かれている。また、そのころに作られたとされる中宮寺天寿国繍帳にも、月を意味する円の中に、不老不死の薬壺と月桂樹の枝とともにはっきりとウサギが刺しゅうされている。なお、中国由来の道教の神仙思想において� ��月は西王母という仙女が治める世界であり、そこではけっして枯れない木(月桂樹)のもとで不老不死の薬をウサギが作っているとされ、そこを訪れた美女が蟾蜍に変えられ月にとどめられているという説話がある。


平安時代の『延喜式』には、「三本足の烏、日之精也。白兎、月之精也」という記述がすでにみられ、ウサギは月の象徴として為政者や日本の寺社でも認識されていたことがうかがえる。他にも、「金烏玉兎(きんうぎょくと)」という言葉があるが、日本では江戸時代までは、太陽と月すなわち全宇宙を天皇が統べるという意識のもと、朝廷のハレの儀式のときには日月を表す幟(のぼり)を必ず立てることとしていた。この幟には金烏と玉兎がそれぞれ太陽と月の象徴として描かれていたとされる[14]それから、『続日本紀』天平四(732)年正月の条に「御大極殿受朝。天皇始服冕服。」とある。この年の正月に聖武天皇は大極殿で朝賀を受けたが、天皇が「袞冕(こんべん)」という礼服を着用したのはこの時が初めてであるという内容であるが、以後、天皇の礼服となるこの袞冕(べん)には、赤地の衣の左肩の部分に金糸の円(その中に黒の烏)、右肩の部分に銀糸の円(その中にウサギと蟾蜍)を刺しゅうしてある。中国皇帝が黒地に左肩に月、右肩に太陽の礼服を用いていたことの影響と考えられる。

こうした月の象徴としてのウサギは、仏教道教的背景を持つ意匠にとどまらず、日本の素朴な民間神事にもあらわれている。

日本、中国、インド、アイヌ、東南アジア、アフリカなど各地に伝わる射日神話と呼ばれるものがある。本来ならひとつであるはずの太陽の数が増えすぎて猛暑大旱魃となり、困った人間たちは知恵を絞り、増えすぎた偽の太陽を射落とすというものである。日本でも各地で奉射祭(オビシャ、オコナイなどともいう)と呼ばれる弓神事が民間で行われてきた。現在でも、滋賀県や利根川下流域の茨城南部から千葉県などで広く行われているが、太陽に擬した的と月に擬した的を用意し、太陽に擬した的だけを、弓矢で射抜く行事である。太陽の的には三本足の烏が描かれ、月の的にはウサギが描かれることが多い。

ウサギは月の化身であり神聖なシンボルとして広く用いられてきたのである。

  • 山の神、あるいは山の神の使いとして

ウサギを山の神と同一視あるいは山の神の使いや乗り物とする伝承も日本各地に広くみられる。

滋賀県高島郡では山の神の祭日には山の神は白いウサギに乗って山を巡る、山の神は白ウサギの姿をしているとされ、京都府愛宕郡では氏神三輪神社境内に祭られる山の神の二月の祭日には白ウサギが稲の種を蒔き、十一月の祭日には白ウサギが稲の落穂を拾うというので、白ウサギは決して獲ってはならないとされている。また、福井県三方郡ではウサギは山の神の使いとされ山の神の祭日に山に入ることの戒めとともに伝わっている。

また、福島県では吾妻山の斜面の雪解け模様(溶け残った雪が白くある部分)を白いウサギの形に見立て、「雪ウサギ」あるいは「種まきウサギ」と呼んで、これを苗代の種まきの合図とした。福島市には「吾妻小富士の下の残雪がうさぎ形に見られる頃になると晩霜の心配がない」という天気ことわざもあり、また、日照りの際にトンビにさらわれたウサギが山の神となったという説話が伝わっている。

こうしてウサギが各地で山の神と同一視されてきたのは、人間の暮らす里と神や動物のいる山とを身軽に行き来することからの境界を超えるものとしての崇拝、多産で繁殖力に富むことから豊穣をつかさどる意味、そして東日本のノウサギは冬には毛皮が真っ白に変化することから白い動物を神性視する考え方(白鳥などを神性視する古来からの白への信仰)、西日本のノウサギは白くはないのであるが突然変異で白くなった動物を瑞兆とした考え方(白蛇、白鹿、白亀などが朝廷に献上された例などにも見られる希少な白への信仰)などさまざまな背景があると考えられる。

また、月読命(豊産祈願)や大己貴命(大国主命)、御食津神(五穀豊穣)などを祭神とする寺社ではその祭神の性格からウサギを神の使いとするところも多い。『古事記』には大国主命に助けられるウサギの話として「因幡の白兎」の話が伝わっている。

ウサギは道教陰陽思想の影響を受けた十干十二支の日本におけるモチーフ獣の一つでもあり、「卯(う)」として暦時方角をあらわしてもきた(詳細は卯を参照)。

[編集] 身近なモチーフ

草食であり、人間の暮らす里と神や動物のいる山とを自在に行き来するその姿は、聖なる対象として見られると同時に、古来から広く人々に親しみをもってさまざまに見られきた。

わらべうたとして「うさぎ うさぎ 何見て跳ねる 十五夜お月様 見て跳ねる」(成立年作詞作曲不詳)と古くから歌われてきたし、ウサギは昔話にもよく登場する身近な動物であった。日本の昔話としては、ウサギが機智を働かせて悪の象徴であるタヌキを懲らしめる「カチカチ山」型の説話がよく知られており、そこではウサギは知恵のあるもの、あるいは悪を嫌悪するゆえに酷なほどに聖なるものとして存在している。 また、「タヌキとウサギとキツネのぼた餅分け」という民話では、ウサギはタヌキとともに、狡猾なキツネに騙される役柄となっている。

その一方で、西欧のイソップ物語を原型して明治以降に広められた「ウサギとカメ」型の説話では、ウサギの良性や聖性は影をひそめ、急がば回れ的な怠け者として描かれる(後述する「欧米におけるモチーフ」も参照)。

そのほか、月への民間信仰との関わりもあってか、その愛らしい姿をデザインしたものは古くから安産、女性や子供の守り神として広く受け入れられ、郷土玩具その他さまざまな道具の意匠に用いられてきた。他にも、謡曲(能)で『竹生島(ちくぶじま)』で「月海上に浮かんでは 兎も波を奔るか 面白の島の景色や」と謡われたことなどから、江戸時代には波の上を跳ねるウサギが瑞祥文様として庶民の着物文様や建築意匠としても広く好まれた。

縁起の良い動物として、企業や団体のシンボルマークに用いられることも多い。

エスエス製薬では、1952(昭和27)年からウサギをシンボルマークとしている。これは、因幡の白兎の物語に出てくる治療が日本の文献上における初めての治療薬らしき描写であること、さらに「白い」という清潔感、「とび・跳ねる」という躍動感をもつこと等からである[15]
全日本不動産協会では、的確に情報をキャッチする耳、未来を見る眼、躍進するジャンプ力のある足をもつことから、ウサギを協会のシンボルマークとしている[16]
ラビット(Rabbit)は、終戦直後の1946年から1968年にかけて富士産業(現在のスバル富士重工業)が生産したスクーターのブランド名にもなった。そのボディデザインがウサギのイメージと重なり、また、スクーターという軽快な乗り物が、飛び跳ねるうさぎの姿を連想させるところから命名したものである。一部モデルは海外へも輸出された。車体につけられたブランドマークには、楕円の中に跳ねるようなウサギの全身が描かれている。

今日の日本では、卯月が四月の春であること、月見をするのが現在は秋であることから、イメージとしては春とも秋とも結び付けられている。俳句においては、野兎や雪兔は冬の季語とされている。

[編集] 欧米におけるモチーフとしてのウサギ

アングロ・サクソンの多産と豊穣をつかさどる春の女神エオストレ(英語版)は、その化身あるいは使いがウサギである。

ウサギは、冬に失われた生命が復活し草木が芽吹き花々が咲き誇る再生の春のシンボルである。卵は宇宙の根源のシンボルであり、宇宙は卵から生まれ、殻の上半分が天になり、下の部分が地になったことをあらわす。絵画等でも女神は必ずといっていいほどウサギを伴った姿で描かれ、このウサギが良い子に卵をもたらすとされる。卵のほうは絵画にはあらわれないが、ウサギと卵の関係について、このウサギは女神が冬に翼の凍ってしまった鳥をウサギに変えたものなので、特別に鳥のように卵を産めるのであるとする話や、ウサギが春色に塗り分けたきれいな卵をプレゼントしたところ女神が大変に喜び、皆にも配るよう命じたという話、ウサギが子どもたちを喜ばせるためにニワトリの卵を庭に隠して探させてみようとしたとこ� ��、そのうしろ姿を子どもたちにみられてしまった話などが伝わっている。欧米では現在も春の祭りの日の余興として、子供たちや招かれた客があらかじめ招待主の隠しておいた庭の卵探しをすることがあるという。

同様の話は、オスタラ (Ostera) アスタルテー (Astarte) イシュタル (Ischtar) イナンナ (Inanna) などの女神の名で欧州各地の神話伝説にあり、さかのぼれば、ギリシャのアフロディーテやローマのビーナスなどにも通じ、古代エジプト、ペルシャ、ローマなどでは春の祭りに卵に着色して食べる習慣が既にあったという。のちに、キリスト教が入ってきたときに、キリストの復活と春を祝う女神信仰が「生命への希望」という共通点で結びつき、エオストレ (Eostre) は復活祭 (Easter) の名前の由来となった。

こうした経緯から、キリスト教会で行われる復活祭(イースター)では、生命と復活の象徴を卵とウサギに求めて、イースターエッグやイースターバニーの名で行事にシンボルモチーフとして登場させる。ただし、正教会においてはイースターエッグのみであり、異教の女神と色濃く結びつくイースターバニーのほうは排除されてしまった。

こうした背景の中で、米英を中心とする西欧世界ではイソップ物語や不思議の国のアリスなどに登場するウサギのように、秩序からはずれた存在をあらわす役目をあてがわれ、あわて者、怠け者、異界へ誘う者、トリックスターとして描かれてしまうことも多い。

また、同様にキリスト教的価値観のもとに、或いはキリスト教的価値観から脱するために、現代アメリカでは誘惑のシンボルとしてカジノなどで女性コスチュームに採用されたりしはじめ、米国の成人誌『PLAYBOY』では、1960年からオスのウサギの頭をデザインした「ラビットヘッド」がキャラクターとして用いられている(ウサギには"快活で、遊び心や茶目っ気がある"というイメージから、「ユーモラスであり、セクシーさの象徴」としてウサギをマスコットに選んだと、マークをデザインしたデザイナーは語っている)。この成人雑誌の創刊に先駆けて、アメリカのヒッチハイカーなどの間で局地的にラビットフット(兎の足)という魔除けのお守りのようなものが1940~1960年代に流行したとされる。

天敵の多いアナウサギは生き残りのために発情期を失くして年中生殖行為を行っているとされている。 一方ノウサギの発情期は春先から秋であり、発情の始まった3月頃のオスのウサギが落ち着かなくなる様を指して「3月ウサギ」というイギリスのことわざが生まれた。

古来からウサギは洋の東西を問わず女性や子どもと関わりの深い動物であり、転じてこうした男性成人向けのキャラクターとして用いられるようになったのは比較的新しいことであり、他にはあまり例がない。

  • 足の速さの象徴として

動きの速いものの象徴として使われることもままある。

種類によっても違うが、ノウサギは、天敵から逃げ切るために時速60~80キロほどのスピードで走ることができる。人間の場合、100m走の世界記録保持者であっても時速にすれば40キロにも達しないことを考えると、いかにウサギが俊足であるかが分かる(アナウサギの場合には、隠れる穴を用意してあるためそこまで早い速度で逃げる能力が発達しておらず、時速35キロほどいわれている)。


ダイムラー社の多目的商用自動車メルセデス・ベンツ・ウニモグにおいて、副変速機シフトレバーに通常の「Hi / Lo」の表記はなく、代わりに「ウサギ / カメ」の図が描かれている。

[編集] 東洋におけるモチーフとしてのウサギ

一方、仏教世界においては献身のシンボルとされる。これは仏教説話集ジャータカ(jātaka)の中に、ウサギが身を火に投じて仙人に布施する物語(ササジャータカ:sasajātaka)があるためである。ちなみに日本におけるモチーフとしてのウサギのところで前述したように、月面の模様をウサギに見立てることも、ここからきている。

[編集] 言語

[編集] 漢字コード

兎の異体字「兔」のShift_JISコード (0x995c) は、漢字(2バイト文字)未対応または対応にバグがあるコンピュータプログラムの動作不良の原因となることがある文字(通称「ダメ文字」)の一つである。

[編集] 日本語の助数詞「羽」

ウサギの日本語における助数詞は、かつて1羽、2羽と鳥と同様の「羽(わ)」を使用することが多かった(今では少数である)。この由来には諸説あるが、おもに以下のようなものがある。

  • 獣肉食が禁止されていた時代、大きく長い耳の形状が鳥の羽を連想させることから「ウサギは獣ではなく鳥だ」と見なして食肉としていたとする説
  • 同じく獣肉食が禁止されていた時代、「ウサギはウ(鵜)とサギ(鷺)に分けられるから鳥だ」とこじつけて食肉としていたとする説
  • 獲物は耳を束ねて持ち歩き、一掴みにすることを一把(いちわ)、二把(にわ)と数えたことから後の羽(わ)につながったとする説

ただし、自然科学の分野ではかつてから匹を使用している。『NHK放送のことばハンドブック』によれば、(文学や食肉として扱う場合を除き)生きたウサギは「匹」を用いるのがふさわしいとされている。 愛玩用のウサギには「頭」が使われる。

[編集] 慣用句、ことわざなど

[編集] 日本
脱兎(だっと)の勢い
極めて迅速なさま。
兎に角(とにかく)・兎も角(ともかく)・兎角(とかく)[17]
「兎角亀毛(とかくきもう)」(後述)に由来する当て字。夏目漱石が使用して一般に定着したとされる。
兎死すれば狐これを悲しむ
明日は我が身。
兎に祭文
何の効果もないこと。
兎の糞
長続きしないことの形容。
兎兵法
実用的でないこと。
兎の股引
後が続かないこと。
犬兎の争い
当事者が争っている間に第三者に横取りされる。
兎の登り坂
前足に比べて後ろ足が長い兎は、坂を登るのが得意である事から、よい状況に恵まれ、力を発揮することを指す。
[編集] 中国
始めは処女の如く後は脱兎の如し
出典は『孫子』九地第11[18]是故始如處女 敵人開戶 後如脫兔 敵不及」(始めは処女の如く敵人の戸を開かせ、脱兎の如く素早く攻撃せよ、敵は防御も間に合わない)という兵法。脱兎のごとく、とは素早くの意味。
兎角亀毛(とかくきもう)
出典は『述異記』の「大亀生毛、而兎生角、是甲兵将興之兆(訳:大亀に毛が生えたり、兎に角が生えたりしたら、それは戦乱が起こる兆しである=意味:通常ならば、亀に毛が生えたり兎に角が生えたりすることはないので、戦争などというものは起こらない)」。『述異記』には、亀は千年生きると毛が生え、五千年で神亀、一万年で霊亀と呼ばれるようになるとも記されている。通常であれば亀は千年も生きないので、「兎角亀毛」は起こりうるはずのないことのたとえに使われる。とはいえ、仮にそのように毛の生えた亀がいるとすればそれは長寿・瑞兆の象徴ということであり、日本でも玄武神亀や鶴亀の瑞祥文様には毛の生えた亀の意匠が用いられる。もともとは仏教用語でもあり、現実にはないのにあると錯覚したり実体の ないものを貴ぶことを戒める意として「人間は兎角亀毛のごときものである。」(『毘婆沙論(びばしゃろん)』)などのように用いられ、悟りに至る以前の迷いの現世を表す言葉となっている[19]
兎起鶻落
出典は蘇軾の『文与可の画きし篔簹谷の偃竹の記』。勢いがあるさま。
獅子搏兎
出典は陸象山の『象山先生全集』。容易なことにも全力で努力する。
狡兎三窟
出典は『戦国策』11巻齊策4齊人有馮諼者[20]の「狡兔有三窟 僅得免其死耳」。狡賢い者は用心深く難を逃れるのが上手い。
狡兎が死んで(猟)犬が烹られる
用が済んだ有能な部下は殺される。
狡兎死走狗烹」:司馬遷『史記』「越王句踐世家」
狡兔死 良狗亨」:司馬遷『史記』92巻淮陰侯列伝韓信[21]
狡兔盡則良犬烹」:『韓非子』内儲説下[22]
守株(株を守る)
出典は『韓非子』49巻五蠹[23]宋人有耕田者 田中有株 兔走觸株 折頸而死 因釋其耒而守株 冀復得兔 兔不可復得 而身為宋國笑」という「守株待兔(しゅしゅたいと)」説話。木の切り株にウサギがぶつかって死んだのを見た宋人が、ひたすらウサギが再び切り株にぶつかるのを寝て待ったことから、旧慣にこだわる愚かしさを意味する。北原白秋作詞、山田耕筰作曲の童謡「待ちぼうけ」はこの故事を元にしている。
[編集] イギリス
ウサギと逃げながら猟犬と狩りをする (run with the hare and hunt with hounds)
両方の味方をする。信念節操のない人。
三月ウサギのように気が狂っている (Mad as a March hare)
落ち着きのない様子。イギリスにおいて春先のオスの野ウサギが狂ったようになる様から。
[編集] スペイン
魚は口がもとで死ぬ、ウサギは歯がもとで捕らえられる。(Por la boca muere el pece, y la liebre tomanla a diente)
「口は禍いの元」の意。
思いもしなかった所からウサギが跳びだす (De donde no se piensa, salta la liebre)
「灯台下暗し」の意。
[編集] ローマ
二兎を追うものは一兎をも得ず(二匹の兎ともいう)
欲張って一度に2つのものを狙うとかえってどちらともの目的を果たせなくなってしまうこと。

[編集] 動植物の名前にみるウサギ

ウサギを連想するような、白くて丸い形をした動植物に、ウサギの名前が冠せられることがある。

たとえば、貝の中でも丸くて白っぽい貝はウミウサギガイ科と名付けられており、ウサギを含んだ名がつけられている。ウミウサギ、マメウサギ、ウサギアシカワボタンガイなど。これらの貝殻はその外観の美しさから海のジュエリーとしてダイバーや貝殻愛好家からの人気も高い。[24]

月兎耳(つきとじ)という植物の名は、白い毛で覆われた長楕円形の葉がウサギの耳を思わせることによる。 ウサギゴケという食虫植物の名は、その白い花が見事に耳をぴんとたてたウサギの形をしていることによる。 バニーカクタスというサボテンの仲間の名は、新芽を出したときにそれが白いウサギのように見えることによる。 ウサギギクの名は、長楕円形の葉がウサギの耳を思わせることによる。

また、兎馬(ウサギウマ)はロバを意味するが、これはロバの大きな耳がウサギを思わせることからきていると考えられる。

動植物の名づけをする際に既知の概念としてウサギが用いられたということは、それだけウサギが親しまれておりその特徴とともによく知られた存在であることの証左である。


[編集] ウサギの関連雑誌

『うさぎと暮らす』(マガジンランド)
季刊誌(2月・5月・8月・11月発行)。日本では珍しいウサギの専門誌で、ウサギに関するQ&Aや生活情報、キャラクター情報を掲載する。老後のケア方法や食事、病気に関する記述も多く、自分のウサギ自慢をするコーナーもある。
『うさぎの時間』(誠文堂新光社)
不定期発行のよう(no.1 - no.8が発行済み)。巻頭にはウサギを飼っている芸能人のインタビュー記事などが掲載される。全部で8巻(9巻はまだ発売していない)。

[編集] 廃刊・休刊となった関連雑誌

『アニファ』(スタジオ・エス[25]
月刊誌。小動物専門の総合誌であったが、ウサギに関する役立つ記事が多く、海外のラビットショーに関する記事も掲載された。別冊で更に詳しいウサギの専門雑誌も同社より発刊された。2008年12月26日発売号(2009年2月号 No.152)を最後に休刊になった[26]
『うさぎがピョン』(スタジオ・エス)
隔月誌(偶数月に発刊)。『アニファ』からウサギのみに特化した雑誌で、2007年4月に第1号(2007年6月 Vol.1)が発行され、2008年12月20日発売号(2009年2月 Vol.11)が最終号となった。

[編集] 参考文献

[編集] 関連項目

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